ひとつの米屋、ひとつの魚屋
母は、常に同じところでモノを買います。
例えば、米は朝倉の無農薬農家にもってきてもらうのがもう20年くらい。卵は浮羽の平飼いの卵を5年くらい。魚屋は駅近くの魚屋でしたが、そこが引っ越したので近くで買うようになりましたが、鉢盛の時だけは遠くまで買いに行っています。
美容室ももう20年くらいで、洋服屋もそこが閉店するまで30年くらいはお付き合いしていたでしょう。
80歳ですがまだ経理の仕事をしていてある程度はパソコンも使えるので、ググったら別のところを探したりオンラインで買ったりできそうなのですが、お付き合いのあるところはずっと買い続けているようです。
それを習って、と意識しているわけではないのですが、私もそういうのが好きです。
時々外食するレストランはあまり変えませんし、美容室も15年以上。相手が個人店ならなおさらで、よほどのことでないと変えることはしないようにしています。調味料のお取り寄せなどもほぼ同じものにしています。
先日、ある方が「応援購入」という言葉について話していたのを耳にしました。「応援購入」は、最近よくあるクラウドファンディングが分かりやすいでしょう。特定のプロジェクトやその会社の思いに共感し、応援すべくその店の商品を購入することです。
そのお店を応援したいから買い続ける。
それだけと思っていたのですが、その「ある方」はそれだけではないというのです。
応援購入することで、応援している自分が豊かな気持ちになるというとびきりの特典があるのだと。
なんだかなるほどと思いました。
お米も美容室も信頼して決めているので、他を探す必要がない。無駄がないし、いちいち相手を品定めする必要もなく気持ちがとてもラク。信頼がおける相手から自分が好きなものを買い続けるという豊かな気分が長く味わえるというわけです。クラファンのシステムを使わなくても、便利でなかった母世代のほうがその気持ちは濃かったかもしれませんね。
とはいえ、途中で応援購入を止める場合もありますよ。ちょっと性格が合わないなと思ったり、お客様に対しての対応があれれと思ったり。
でも、長い付き合いになれば、ちょっとしたことは許し許され、そんな品定めしない関係というのは、まさに「心のゆとり」であり「豊かさ」なのだと思います。
そう考えてみると、キッチンパラダイスにもそのような温かく応援購入してくださる方がたくさんおられます。
応援購入を受けた側の気持ちとしては、「全身全霊でみなさんの役に立つように努力しよう」と思うようになります。応援購入は、店を育て、愛を膨らませ、買った方も豊かになり、それが次世代へとつながっていくと思うんですよね。
「恩に着る」という言葉が日本語にはありますが、ほんとうにいまの私は応援購入のようにキチパラをご利用いただく皆様の温かさに、心から恩に着る気持ちでいっぱいです。私の気持ちをまるで子育てのように育てているのが、みなさんなのです。