銅製の玉子焼き器の2つの謎

銅製の玉子焼き器の謎

玉子焼き器をアマゾンで検索すると、売れ筋の3位までが3000円以内のフッソ加工の玉子焼き器、4位が5000円くらいの鉄製のもの、そしてまた18位までフッソ加工です。(2024年5月現在)

一部の料理好きの間で、「銅の玉子焼き器って、なんかすごくいいらしい」とは聞くものの、人気ランキングからするとまだまだです。27位くらい。

それでも、銅の玉子焼き器をを使った方は手放せなくなるだけでなく、その美味しさのあまり、出汁巻卵がヘビロテになる方が結構な数います。注)ヘビロテ=ヘビーローテーション意味:短い期間に何度も繰り返すこと

さて、素材がフッソ加工(アルミニウムやステンレスが基材)から銅になるだけで、出汁巻の仕上がりにそんなに違いがあるものでしょうか?

一般の家庭にそこまで浸透してないというのは、高いから?あるいは使い方が難しいからでしょうか?

今回は、よく聞かれるこの2つの謎を、私なりに解説したいと思います。

1つ目の謎:銅は仕上がりが違う?

銅は熱伝導がとてもいい素材です。一般社団法人日本銅センターが銅の素材の特徴を紹介しています。(参照:JCDA 銅の特徴)

熱伝導性というのは、熱の伝わりやすさの数値です。例えば、鍋底を温めたらすぐに鍋全体が温かくなるといったことです。銅はこの熱伝導性にすぐれていて、この特性から、熱交換器、蒸留窯、エアコン、瞬間ガス湯沸器などに生かされています。

銅はこれに加えて、蓄熱性(熱容量)も高く、一旦温まるとそれを持続できることでも、道具の素材としては抜きんでています。

銅の蓄熱性にはもうひとつ特筆すべきことがあります。

それは銅が素材の中に瞬時に熱を伝えるという特性があるのです。

卵を薄く垂らしながら巻いて作る出し巻卵にはもってこい。卵液を垂らした瞬間から、玉子焼き器に接した卵液だけでなく、卵液の表面(上の方)にも同時に熱が伝わりますので、すぐに巻くことができます。たとえ半熟でも巻いていくうちに、出来上がった時には十分に中心部にも熱が伝わっていることになります。

その短時間の仕上がりが、出汁が薄まったり、調味料が煮詰まったりせず、美味しく仕上がることに繋がると考えています。

2つ目の謎:使い方が難しいか?

私やお店のスタッフも含めて、プロの職人さんたちは1つの銅の玉子焼き器を何十年も使っています。私の恩師で98歳になられる料理研究家桧山タミ先生は、古い銅の玉子焼き器を毎日のように使われていて、先日70年越しに銅の磨きなおしと錫の張替を職人さんに頼み、新品同様で戻ってきました。

毎回そんなに難しければ、誰もそんなに長くは使いません。

使い方が難しいのではなく、おそらく銅の特性と正しい使い方を知らないというだけではないかと思います。

銅製の玉子焼き器使い方のポイントは、

①銅(錫引き)は、油を浸みこませながら使う素材であること。

→くっつくときは油ならしがうまくいってないだけ。油ならしの仕方を覚える。

②中火から強火に近いほうが、より短時間でふんわり仕上がる

慣れるまでは中火で。
焦げそうな時は遠火で巻くことを覚える。

③錫引きが剥げる、傷がつく、黒ずむ

錫は劣化する素材であることを知っておく。
硬いヘラや金属タワシで傷つくことを知っておく。
黒ずむのは部分的に空焚きが長い時に発生するけど気にしないこと。
気になる時は、表面は研磨不織布で。

④銅が変色する

銅は一度使えば変色するもの。
味や使い方に変わりはないので気にしない。
ずっと金色できれいに保つのは不可能と理解し、たまに酢と塩で磨く。
黒い煤っぽいのは研磨不織布などで磨く。

⑤緑青がでる

→洗ったらコンロで軽く温めて水気を飛ばすことを覚えておく。
長期使わない時は布か新聞紙でくるむと湿気がよりつかない。

銅製の玉子焼き器の2つの謎のまとめ

「道具ひとつでこんなに違うんですね!」

銅の玉子焼き器を買われたみなさんの感想です。

出汁巻の出汁の味が残り、ふわっとする出汁巻卵、ふわふわの厚焼き玉子。銅の価格がどんなに高くなっても、プロが銅を手放さないのは、確実においしくなる道具だからだと思います。

あとは、使い方になれるだけ。

キッチンパラダイスのスタッフ全員が長年使っているので、その良さはもちろん、みなさんが難しいと思うポイントはよくわかります。

銅の玉子焼き器はいつ購入しても一生モノ。育てながら使う楽しさがあります。わからないことがあればいつでも私たちにお尋ねください。いつもご相談役になれればと思っています。

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銅の価格の推移

銅の価格は驚くほど上昇しています。2008年ごろには、もう銅鍋などの生活用品に使用するのは難しいのではないかと思い始めましたが、なんとかこの高さでも踏ん張って作り続けているようです。

理由は、情報化技術の発展とともに、通信・電子機器ほか多くに銅が使用されているからです。特に、半導体素子の導電部材に使われおり、これが権益競争となりこれからもさらに値をつり上げそうです。

銅には今後高い値段がつくと思います。いまお持ちの方が万が一使わなくても、高価な素材ということをお忘れなく!

参照:https://ecodb.net/commodity/copper.html