伝説のホテルでアイライナーを落とした話
はじめて泊ったのはかれこれ16年くらい前のこと。東京に行くと必ず宿泊したホテルがありました。
名前はHOTELクラスカ。2003年創業したこのホテルは、当時、古い「ニュー目黒」をおしゃれにリノベーションした話題のホテルでした。
1階には朝食が飛び切り美味しいカフェがあり、手作りのジャムが3種類くらいでてくるのがお気に知り。そんなに高くなかったし、夜はバーとして使えました。
2階には、CLASKA Gallery & Shop “DO"という雑貨店があり、工芸品やら洋服やバッグなどのライフスタイルショップが。
8階はレンタルギャラリーや屋上も。ルーフトップに飲み物を持ってきてもらい、そこに転がって夜空を眺めながらひとりでくつろいだものでした。
リノベーションした20の客室はすべてがひとつひとつコンセプトが違っていて、いつも違う部屋に泊まるのが、出張の楽しみだったのです。
撮影にも使われていて、狭いエレベーターにうっちゃんと一緒に乗ったり、モデルさんも居たりしました。
残念ながら2020年に閉館していたそうなのです。
建物が51年を経て老朽化が進み、契約が切れるタイミングで営業終了を決めたということでした。
いやあ惜しい。いいホテルだったのですよ。10年の間に年に2回づつ、他の便利なホテルに泊まることもたまにはありましたが、おそらく20回くらいは宿泊したと思います。
10年前、アイライナーが無くなったを気が付いたのは、東京から帰った翌朝。
800円くらいと高くもないものだったし、替えも持っていたので、どこで落としたかも気にもせずにいたのです。
半年後に再度クラスカを訪れた時、チェックインが終わって部屋に向かおうとすると、背後からいつもの顔見知りのフロントマンの男性が近寄ってきて、「あの、、、これ、、、田中さんのじゃないですよね?」
なんと、半年前に落としたアイライナーでした。「私のですよ!」
なぜ半年ももっていたのかと聞くと、掃除した時にいつからベッドに奥に転がっているのか不明だったので、宿泊された田中さんに電話するのに気が引けた、ということでした。
「それで、次にまたきてくださるだろうとお待ちしていたのです」とのこと。
あまりに愚直すぎる。笑)アイライナーのことは、ただそれだけの話。
月に600組超のお客様をお迎えしているのに、私ひとりの800円のアイライナーを返そうとして覚えていてくださったことに、感動したのでした。
閉館したと聞き、残念です。お世話になりました。